カサブタ

心の瘡蓋
少しずつ硬くなる

出来上がる
心の殻

知らぬ間にとる
心の距離

目尻を下げ
口角を上げる

素敵に笑う
完璧な嘘つき笑顔

誰も気が付かない
誰にも気が付かせない

軽やかに生きるため
手にした生きる術

笑顔は最大の防御であり
最大の攻撃方法

笑いながら
ぽつり

危うい本音を
ぶちまける

角が立たぬように
重くならぬよう

細心の注意を払いながら

こつりコツリ
心の殻が固くなる

嘘つき笑顔のたび
分厚くなる殻

誰も気づかない
誰にも気づかせぬようにしてたのに

しまった気づかれた
あの子に気づかれてしまった

触れられるのが怖くて
ひたすら逃げた

本当は触れて欲しくて
あの子に触れたくて

手を伸ばしかけて
逡巡してる間に消えてしまった

あの子の灯火

グラリ揺れる足元
崩れる躰

欲しかったのは温もり

嘘つき笑顔じゃ
本当の幸福は手に入らない

身にしみて思い知る

それでも長い間の習慣は
抜け出ることもなく

今も反射的に出る
嘘つきな笑顔

心の底から笑ったのはいつだろう？
本当の笑顔はいつ以来？

思い出すことも出来ないほど
遥かな昔の話

心の瘡蓋
今もまだ癒えぬまま